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強度近視の視力低下・視野障害の評価

No.4710 (2014年08月02日発行) P.64

大野京子 (東京医科歯科大学眼科准教授)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

強度近視では,眼球が進行性に拡大し,形状変化することで様々な器質的変化が生じます。近視に伴う黄斑部病変や網膜脈絡膜萎縮は知られていますが,視神経変化はあまり認識されていません。近視に緑内障が合併しやすいという説に含まれてしまっているのかもしれません。
東京医科歯科大学・大野京子先生は「病的近視の視神経障害」の存在を積極的に認めておられます。進行性の強度近視にみられる視力低下や視野障害を網膜脈絡膜病変,視神経障害とどのように関連づけるのか,緑内障診断との関連も含めてお教え下さい。
【質問者】
若倉雅登:井上眼科病院名誉院長

【A】

病的近視眼では,様々な黄斑部病変や周辺部網膜病変が起こりますが,これらの眼底病変で説明できないような視野障害をしばしば合併します。これは視神経障害によるものと考えられます。
私たちの解析では,病的近視の中で程度の軽いもののみ抽出しても約15%に視神経障害によると思われる視野障害がみられました。この視神経障害が緑内障かどうか明確ではありません。おそらく原因として緑内障も含まれると思われますが,最近のswept-source OCT(optical coherence tomography)から,視野障害の原因となる病巣が複数明らかになっています。それには視神経周囲のくも膜下腔の拡大,乳頭ピットまたはコーヌス内ピット形成,主として乳頭下方にみられるintrachoroidal cavitation(ICC)などがあります。
特に,乳頭またはコーヌス内ピットやICCにおいては,その上を走行する網膜神経線維が断裂している様子がOCTで明らかとなり,断裂部位を通る神経線維の走行に一致した視野障害がみられることから,これらの構造異常が視野障害に直結している例が少なからずあります。これらから,近視性視神経症(myopic optic neuropathy:MON)という用語が考案されています。
しかし最近,緑内障においても,強膜篩状板の局所欠損があり,この欠損部に一致して乳頭出血や視野障害がみられることが報告され,篩状板レベルの構造異常の存在が可視化されています。
以上から,MONと緑内障には共通した病態も多いと考えられ,今後の研究の進歩が期待されます。

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