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片側の突然の後頭部痛と椎骨動脈解離

No.4711 (2014年08月09日発行) P.59

鈴木倫保 (山口大学大学院医学系研究科脳神経外科教授)

米田 浩 (山口大学大学院医学系研究科脳神経外科講師)

登録日: 2014-08-09

最終更新日: 2021-01-06

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【Q】

頭痛専門医として,中年男性に突然起こる片側の後頭部痛を診断する際に,除外診断として頭部MRIとMRアンギオグラフィ(magnetic resonance angiography:MRA)を施行すると,椎骨動脈解離にしばしば遭遇します。頭痛のみで経過することもありますが,くも膜下出血や脳梗塞に進展することもあります。また,発症直後に患者さんが受診することもありますが,発症から数週間くらい経過してから頭痛が持続するとのことで受診することも間々あります。どのような場合に入院を勧め,また外来での経過観察とするのか,さらにどのくらいの間隔で頭部MRAをフォローアップすればよいでしょうか。山口大学・鈴木倫保先生に。
【質問者】
清水俊彦:東京女子医科大学脳神経外科 (頭痛外来客員教授)

【A】

突然の片側の後頭部痛を主訴に,発症後すぐに患者さんが受診した場合は,椎骨動脈解離を疑うことが可能で,直ちに精査を行うと思います。問題なのは,椎骨動脈解離は突然発症の後頭部痛ではなく,いつもの頭痛の悪化やめまいの症状で発症する場合があることです。
数週間続く後頭部痛または後頸部痛を主訴に来院した場合,血管の内腔を観察するMRAと血管の外壁を観察するMRI-BPAS(basi-parallel anatomical scanning)法との不一致があれば,発症が数週間くらい前と思われる椎骨動脈解離患者と診断できます。
私たちの施設では通常この時点で患者さんに入院してもらい,脳血管造影検査を行います。重要なのはくも膜下出血や脳梗塞を伴っていないか,必ず診断することです。CTやMRI FLAIR(fluid attenuated inversion recovery)画像でくも膜下出血が明らかでない場合には腰椎穿刺を行います。もちろん,くも膜下出血を伴っている場合は外科的処置をすぐに施行します。
未破裂の仮性動脈瘤や「double lumenサイン」や,膨隆部と狭窄部が混在する「pearl and stringサイン」を伴っていたり,MRIのDWI(diffusion-weighted imaging)で虚血を伴っていたりする場合などは入院を継続し,必要な治療と画像フォローにより,悪化がないことを確認してから退院させ外来でフォローします。椎骨動脈の壁にsmoothで紡錘状の拡張のみが見られる場合は外来で画像の経過をみることもあります。また,画像フォローのタイミングは,初診時の所見により変わりますが,1週間,4週間,3カ月,6カ月,1年後を目安に行います。

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