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果実アレルギーの症状と診断

No.4719 (2014年10月04日発行) P.61

矢上晶子 (藤田保健衛生大学皮膚科准教授)

松永佳世子 (藤田保健衛生大学皮膚科准教授)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

(1)果実アレルギーの患者さんは,その果物のみに口腔内アレルギー症状を認めるだけの例,他の各種果実にも反応する例,アナフィラキシーショックを引き起こす例など,様々な臨床症状を発症しますが,これはなぜでしょうか。
(2)原因同定のために行うべき検査。
(3)アレルゲンコンポーネントを用いた検査の利点。
以上について,藤田保健衛生大学・矢上晶子先生のご回答をお願いします。
【質問者】
鷲崎久美子:大森町皮ふ科院長

【A】

[1]様々な臨床症状を誘発する理由
近年,果実アレルギーの症例報告数が増加しています。1種類の果実でも様々な症状が誘発されますが,その違いは患者さんごとに原因となるアレルゲンが異なることにあります。特に多種類の果実に症状が誘発される場合は,主に花粉抗原と果実抗原との交叉反応性によります。
このような果実アレルギーは,花粉抗原により感作が成立し,その後,こうした抗原に対して交叉反応性を示す蛋白質を含んだ果実や野菜を経口摂取した際に口腔粘膜や消化管粘膜においてアレルギー症状が誘発されます。交叉反応性に関与している主な抗原としては下記の抗原が挙げられます。
(1)PR-10蛋白(感染特異的蛋白質):シラカンバ花粉の主要抗原であるBetv1が属します。これらはリンゴ,サクランボ,アプリコット,洋ナシ,セロリ,ニンジン,大豆などに含まれます。
(2)プロフィリン(profilin):シラカンバ花粉の別の主要抗原であるBetv2が属します。細胞骨格に関連したすべての真核生物に存在するアクチン重合蛋白であり,植物において広範な交叉性を示し,セリ科スパイス,マスタード,ズッキーニ,ライチ,モモ,ラテックスのほか,様々な植物性食品に含まれます。
通常,交叉反応性に基づく果実アレルギーの場合は,熱や酵素に不安定で,臨床症状は口腔内に限られる傾向があります。そのほか,花粉抗原との交叉反応性は持ちませんが,広範囲の果実に含まれ,アナフィラキシーなど重篤な症状を誘発する抗原として脂質輸送蛋白(lipid transfer protein:LTP)が挙げられます。この抗原は熱や消化酵素に強いという特性を持つため,果実単独で重篤な症状を誘発します。モモ,サクランボ,リンゴ,イチゴなどに含まれます。
[2]原因同定のための検査
詳細な問診で検索すべきアレルゲンを想定した上で,抗原特異IgE抗体価測定,皮膚テストを行います。
特異IgE抗体価は,偽陽性あるいは偽陰性の結果がもたらされる場合があるので,臨床症状や皮膚テストの結果とともに評価しています。皮膚テストはプリックテストを実施しますが,果実アレルギーの場合は新鮮な野菜・果実を用いることが有用です。また,加工により摂取できる可能性があるため,加工品についても検査を行います。
[3]アレルゲンコンポーネントの有用性
粗抽出アレルゲンを構成する蛋白質分子をアレルゲンコンポーネントと呼びます。粗抽出アレルゲンには直接アレルギー症状の有無とは結びつかないコンポーネントが含まれていますが,臨床症状を反映するアレルゲンコンポーネントを用いた検査を実施すれば,より精度の高い検査を実施できることになります。Bet v1やBet v2などの交叉反応性を示すアレルゲンコンポーネントでは,多種類の果実に対する特異IgE抗体が陽性となるような症例の原因を調べることも可能になります。

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