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OCT所見と緑内障治療開始のタイミング

No.4719 (2014年10月04日発行) P.62

芝 大介 (慶應義塾大学医学部眼科)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の普及は網膜疾患のみならず緑内障の早期発見に貢献していると考えられます。しかし,視神経乳頭陥凹がありOCTで神経線維の菲薄化が著明な場合でも,眼圧が正常で視野異常のまったくない症例では,治療を開始するタイミングに躊躇してしまいます。慶應義塾大学・芝 大介先生は治療を開始するタイミングをどのように決定しておられるのか,お教え下さい。
【質問者】
井上 真:杏林アイセンター准教授

【A】

緑内障は視神経乳頭部で眼圧依存性に視神経が障害される疾患です。発症から視機能を失うまでの過程は連続的ですが非常に幅広く,その様子を緑内障連続体(glaucoma continuum)と表現することができます。
1割程度の視神経が減少したようなきわめて早期の場合は現存する検査法では検出不可能です。正常の7割程度に視神経が減少すると,ご指摘の視神経乳頭陥凹など構造的変化によって,診断が可能になります。近年導入されたOCTも構造による診断であり,このレベルで診断可能と考えられています。正常の5~6割に視神経が減少すると,その部位の網膜の感度が下がるため,視野検査で機能低下を検出できます。
ご指摘の状況は,構造的変化があっても機能的な低下がない極早期の緑内障であり,preperimetric glaucoma(前視野障害期緑内障)と呼ぶことが一般的になってきました。まだ機能障害がない状況であり,進行リスクが高くない限りは治療の対象でないと考えます。しかし,緑内障であることは確かですので,眼圧が高い,僚眼の緑内障,視神経乳頭出血および家族歴などの因子があれば,治療を積極的に考えています。
スペクトラルドメインOCT(spectral-domain OCT:SD-OCT)は測定精度が非常に高く,乳頭周囲視神経線維層厚に加え,黄斑部の網膜内層厚の計測を併用して,OCTで進行の有無と進行速度を把握することも可能です。
緑内障の治療はいったん開始すると中止することは非常に困難ですので,それらの結果を待って治療導入を図ってもよいかもしれません。ただし,視野障害がいつ出現するか予測は困難なので,それまで治療を開始しないという方針も十分に合理的です。いずれにせよ,重篤な視機能低下が予想されるハイリスク群を特定して早期治療することが理想です。

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