骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)の病態には不明な点が多かったが,解析技術の向上によってMDSの発症や進展に関わる遺伝子異常が明らかになってきており,DNAやヒストンのメチル化制御,RNAスプライシングに関わる遺伝子の変異が見出された。
このような病態に基づいて,治療薬として脱メチル化薬であるアザシチジン(AZA)が開発され,高リスクMDSに対して従来の治療に比べ,全生存期間(OS)の延長や血球減少の改善効果をもたらすことが大規模比較試験(AZA-001試験)において明らかにされた。OS中央値が通常治療群では15カ月であるのに対して,AZA治療群では25カ月であった1)。AZA治療は外来通院での加療が可能なため,患者のQOLを保つことができる点でも有用である。さらに,造血幹細胞移植適応MDSにおける病勢コントロールに対して有効であると報告されている2)。
しかし一方で,大規模観察研究では,AZA治療を行った高リスクMDSのOS中央値は13.5カ月と報告され3),AZA治療の限界も見出されている。MDSの病態に基づいた新たな治療戦略の構築が望まれる。
【文献】
1) Fenaux P, et al:Lancet Oncol. 2009;10(3):223-32.
2) Damaj G, et al:J Clin Oncol. 2012;30(36): 4533-40.
3) Itzykson R, et al:Blood. 2011;117(2):403–11.
【解説】
多林孝之 埼玉医科大学総合医療センター血液内科講師