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呼吸器外科と抗血栓療法 【抗血小板療法は手術前日まで,抗凝固療法は術前にヘパリン置換を行うことで,安全に手術を施行】

No.4827 (2016年10月29日発行) P.57

中田昌男 (川崎医科大学呼吸器外科教授)

登録日: 2016-10-26

最終更新日: 2016-10-25

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高齢化と麻酔技術の進歩に伴い,高齢者にmajor surgeryを行う機会が増加した。高齢の患者は循環器疾患を合併していることが多く,虚血性心疾患,閉塞性動脈硬化症,心房細動,脳梗塞などに対してしばしば抗凝固療法,抗血小板療法がなされており,その周術期管理に苦慮することも多い。これらの抗血栓療法に関するガイドラインは日本循環器学会から示されているが,周術期の出血・血栓などのリスクについての詳細な記載はない。日本消化器内視鏡学会による「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」では,出血の危険性によって管理法が分類され提示されている。さらに,近年は新規経口抗凝固薬(NOAC)が出現し,その管理はますます複雑化しているようである。

当院では,原則的に抗血小板療法(アスピリン,チクロピジン,シロスタゾールなど)は手術前日まで継続し,抗凝固療法(ワルファリン,NOACなど)は術前にヘパリン置換を行って手術に臨んでいる。2008年から14年までに抗血小板療法施行例25例,抗凝固療法施行例37例,両療法併用例5例に対して,肺区域切除以上の肺切除術を行ってきたが,術中出血量,出血・血栓に関する合併症はともに循環器疾患非合併例と差はなく,安全に手術を行うことができた。しかし,抗血栓療法を受けている患者の疾患背景は症例によって大きく異なり,画一的な周術期管理では合併症の危険性が高くなることも予想される。症例ごとにきめ細かい病態の把握と,適切な管理を行うことが最も重要であることに変わりはない。

【解説】

中田昌男 川崎医科大学呼吸器外科教授

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