人工尿道括約筋埋め込み術は,主に前立腺癌に対する前立腺全摘除術後などの尿道括約筋障害による中等度~重症の尿失禁に対する治療法であり,わが国ではAMS800Ⓡという機種が2012年4月に保険収載となった。
手術は全身麻酔下で行う。球部尿道にシリコン製のカフを巻き,陰囊内に埋め込まれたコントロールポンプ,骨盤内に留置された圧力調整バルーンとそれぞれチューブで接続し,すべてを圧媒液で満たす。畜尿時はカフにより尿道が一定の圧で閉鎖されており,排尿時に患者自身がコントロールポンプを押しカフ内の圧媒液がバルーン内に移動することで排尿可能となるしくみである。わが国での長期的な成績はまだ報告されていないが,海外のsystematic reviewによれば,成功率(pad 1枚/日以下)は79%(観察期間:5~192カ月)と良好な長期成績が得られている1)。また,約90%の患者が満足を得られたと答えている。
一方で,手術の性質上,完全に禁制を得ることは難しく,pad free rateはおおむね50%未満とされており,患者から十分な理解を得る必要がある。合併症としては創部感染,尿道萎縮,尿道びらん,器械の不具合などが挙げられるが,57%の患者が10年後も同じデバイスを使い続けることができたとの報告2)がある。本術式は今や男性重症腹圧性尿失禁治療のゴールドスタンダードとなっている。今後は,わが国においても長期成績の報告が待たれる。
【文献】
1) Van der Aa F, et al:Eur Urol. 2013;63(4):681-9.
2) Linder BJ, et al:Urology. 2015;86(3):602-7.
【解説】
布施美樹 千葉大学泌尿器科