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たばこ対策

No.4710 (2014年08月02日発行) P.59

中村正和 (大阪がん循環器病予防センター予防推進部長)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-10-26

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わが国の喫煙率は近年減少傾向にあるものの,今なお,喫煙は日本人が命を落とす最大の原因である。2012年に示された健康日本21(第二次)において,喫煙による健康被害を減らすために,第一次計画では実現できなかった「成人の喫煙率の減少」「受動喫煙の曝露の減少」「妊娠中の喫煙をなくす」という目標が新たに盛り込まれた。これらの新たに設定された目標により,喫煙の健康被害を短期間で減らす効果が期待できる。また,これに関連した施策として,2013年度からの第2期特定健診制度において健診当日からの禁煙支援の取り組みが強化された。
近年,経済格差の拡大に伴い健康格差の拡大が問題になっているが,低所得者ほど喫煙率が高い傾向にある。喫煙率の格差是正も含め,喫煙率を効果的に減らすためには,わが国が批准しているWHOの「たばこ規制枠組条約」(2005年2月発効)に基づく社会環境整備が必要である。特にたばこ税・価格の大幅引き上げは成人の禁煙促進や青少年の喫煙防止に役立つほか,喫煙率の高い低所得者層の禁煙を促進する効果がある。2010年のたばこの値上げ(値上げ幅が1箱約110円)は一定の効果があったが,その効果は持続しないため,今後,継続した値上げか,欧米並みの価格帯への大幅な引き上げが求められる。
受動喫煙防止は,健康増進法による努力義務にとどまっているが,今後法規制の強化が必要である。さらに,喫煙の本質がニコチン依存症であることをふまえ,2006年に実現した健康保険による禁煙治療の充実のほか,医療や健診の場での禁煙支援の普及や禁煙希望者が気軽に相談できる無料電話相談(たばこクイットライン)の整備が必要である。

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