光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は1996年に眼科領域で応用された検査機器であり,網膜の断層像を撮影することができる(文献1)。発売された当初は網膜構造の詳細な観察は困難であったが,現在では分解能が3~7μmと高まり,網膜の10層構造が明瞭に識別できるレベルまで改良されている。それに伴って,網膜剥離,糖尿病網膜症など多くの網膜疾患においてOCTの有用性が認識され,それら疾患の診断・治療評価が以前と比べ格段に容易になっている。その有用性ゆえ,現在では大学病院などに限らず,眼科クリニックにおいても広く普及している。
OCTは非侵襲であり無散瞳状態でも撮影可能であるが,現在の市販機では画角が狭く網膜黄斑領域の撮影に限られる。そのため,網膜周辺部の病態には不向きである。また網膜疾患のみならず,神経線維層・神経節細胞の菲薄化をきたす緑内障診断,経過観察にもOCTの有用性が認識されつつある(文献2)。さらに近年では,角膜など前眼部の観察が可能な前眼部OCTも登場しており,今や眼科診療に必須な検査機器となっている。
1) Hee MR, et al:Arch Ophthalmol. 1995;113(3): 325-32.
2) Bowd C, et al:Invest Ophthalmol Vis Sci. 2001; 42(9):1993-2003.