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機能性僧帽弁閉鎖不全に対する左室形成術

No.4721 (2014年10月18日発行) P.56

荻野 均 (東京医科大学心臓血管外科主任教授)

登録日: 2014-10-18

最終更新日: 2016-10-26

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僧帽弁の弁葉自体や腱索の異常により発生する僧帽弁閉鎖不全(MR)に対し,弁切除,縫縮,人工腱索,弁輪縫縮(±リング縫着)など,様々な術式により今や90%近い成功率で僧帽弁形成術が可能となってきた。その完成度の高さも加わって,右開胸下を中心に小切開心臓手術(MICS)が試みられることが多くなってきた。しかし,別のMRの発生原因として,左室の拡大もしくは左室および乳頭筋の機能低下に伴って発生する機能性僧帽弁閉鎖不全(FMR)の存在が注目され,その外科治療が最近の議論の的となっている。
FMRは,(1)狭心症や心筋梗塞の既往などを含めた心筋虚血によるもの,(2)心筋症に代表される非虚血性心筋障害によるもの,に大別され,特に(1)が増加傾向にある。治療として一時期,one-size小さめのリングを用いた僧帽弁輪縫縮術(undersized mitral annuloplasty)が簡便な方法として推奨され,そのための専用のリングも開発された。しかし,遠隔期のMRの再発や相対的な僧帽弁狭窄を認めるなどしたため,本法の推奨度はやや弱まったと言える。
一方で近年,心不全治療の一環として,左心室全体の変形,拡大を矯正すべく,Dor手術,Batista手術,SAVE手術などの左室形成術の有用性が提唱されている。その際,拡大した乳頭筋間の縫合短縮(approximation)や乳頭筋のつり上げ(relocation/suspension)などの補助手技により,有効なMRの改善が得られている。特に,心臓移植や植込型補助人工心臓の分野での広がりに限界がみられるわが国では,このような慢性心不全に対する外科治療の有用性が高いと言える。

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