1991年に黄斑円孔に対して硝子体切除が有効であることが明らかにされた。現在では,硝子体切除に内境界膜剥離,ガスタンポナーデ,術後の伏臥位を併施することで,90~100%の確率で黄斑円孔を閉鎖することが可能である。しかし同時に,これらの術式を用いても閉鎖しない.いわゆる難治性黄斑円孔の存在が明らかとなり,有効な治療法の開発が望まれてきた。
このような状況の中,2010年,Michalewskaら(文献1)は難治性黄斑円孔の閉鎖を目的として,内境界膜翻転法を考案した。この術式は,意図的に内境界膜を残存させ活用するという新しい概念に基づく術式であり,難治性黄斑円孔の閉鎖率の向上に有効であった。しかし,内境界膜が既に剥離除去されている症例には適応がないという点が問題であった。
この問題点を解決すべく,2014年にMorizaneら(文献2)によって内境界膜自家移植法が考案された。この術式は,内境界膜を一部切除して黄斑円孔内に移植し,円孔の閉鎖を促す方法である。難治性黄斑円孔の閉鎖に有効であり,既に内境界膜を剥離除去した症例に対しても適応がある。
以上のように,近年,黄斑円孔に対する術式は多様化している。黄斑円孔の性状や手術既往に応じて術式を選択し,治療戦略を立てることが重要である。
1) Michalewska Z, et al:Ophthalmology. 2010;
117(10):2018-25.
2) Morizane Y, et al:Am J Ophthalmol. 2014;157
(4):861-9.