超高齢社会や医療の多様化に伴い,「市中肺炎」と「院内肺炎」の中間に位置する「医療・介護関連肺炎」が注目されている(文献1)。(1)長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している,(2)90日以内に病院を退院した,(3)介護を必要とする高齢者,身障者,(4)通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免疫抑制剤等による治療)を受けている,症例に発症した肺炎と定義される。市中肺炎と同等の症例数があり,市中肺炎よりも予後が不良とされる。
筆者らの検討では,特に介護施設で発症した症例の予後が不良であった(文献2)。多くは誤嚥性肺炎であり,肺炎の分類や耐性菌に対する治療の失敗よりも,神経疾患または意識障害による臨床的な嚥下障害の所見があり,胸部CTで背側・下葉に分布する陰影が確認されたことを定義とした,誤嚥性肺炎が最も不良であった(文献3)。また,自立度が不良なほど耐性菌が多く分離され,予後は不良であるが,広域抗菌薬を使用しても予後は改善しない可能性がある。自立度や栄養状態の低下が予後不良因子として重要であるが,日本で頻用されている胃瘻は,世界的には誤嚥性肺炎を予防しえないとされる。医療のみでは解決できず,行政やモラルなどとも関係するが,2025年問題がせまる中,直視して対応を考える必要がある。
1) 日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会, 編:医療・介護関連肺炎診療ガイドライン. 日本呼吸器学会, 2011.
2) Umeki K, et al:Respirology. 2011;16(5):856-61.
3) Komiya K, et al:Respirology. 2013;18(3):514-21.