大脳白質病変は,加齢,老年期うつ,認知症と関連していることが多く報告されている。大脳白質病変を定量化する方法はいまだ普及していないが,近年,3次元T1強調画像撮像法の発展に加え,組織抽出,画像変形技術が大きく進歩し,白質病変の全容積や各領域ごとの容積計測が可能となってきている。
当科では,健常高齢者(NC),老年期うつ(LLD),軽度認知機能障害(MCI)に対して,FLAIRにおける大脳白質高信号(WMH)の容積を3D-slicerを用いて算出し(文献1),それと相関する認知機能,局所脳血流を各群で検討した。
LLD,MCIでは各葉のWMH容積と認知機能に相関を認めなかったが,NCでは前頭葉,頭頂葉,後頭葉のWMH容積と,遂行機能速度の遅延に有意な相関を認めた。また,LLD,MCIではWMH総容積と,前頭葉,側頭葉,頭頂葉の脳血流に有意な正相関を認めたが,NCでは中前頭回領域のみに有意な正相関を認め,LLDとMCIにおいてWMH容積の増大により脳血流が増加する関係は,NCにはみられない代償効果を示している可能性が考えられた。
大脳白質病変により引き起こされる脳機能変化のメカニズムを明らかにすることは,LLDやMCIの認知機能や抑うつに対する新たな予防ならびに治療戦略へつながると考えられるため,今後もさらなる検討が必要である。
1) McConnell KA, et al:Neurosurgery. 2004;55(3):582-92.