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苦痛のスクリーニング

No.4767 (2015年09月05日発行) P.56

木下寛也 (国立がん研究センター東病院緩和医療科科長)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2016-10-26

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緩和ケアががんと診断されたときから提供されるよう,(1)がん患者の身体的苦痛や精神心理的苦痛,社会的苦痛などのスクリーニングを診断時から外来および病棟にて行うこと,(2)院内で一貫したスクリーニング手法を活用すること,(3)緩和ケアチームと連携し,スクリーニングされたがん疼痛をはじめとするがん患者の苦痛を迅速かつ適切に緩和する体制を整備すること,ががん診療連携拠点病院の指定要件となった。
しかし,がん患者の苦痛のスクリーニングの有効性に関するエビデンスは拮抗している。スクリーニングを推進してきたCarlsonら(文献1)は,スクリーニングとスクリーニング+トリアージの比較試験を行い,後者で患者の苦痛が軽減することを示し,スクリーニングに基づいたトリアージの重要性を示した。一方,実臨床ではスクリーニングの労力に見合う成果が得られないため,臨床家の半分がスクリーニングは有用でないとしたという米国の調査結果(文献2)もある。英国の研究は,患者の症状・QOL・費用対効果のすべてで効果を認めず,患者への効果は期待できないと結論づけた(文献3)。
わが国では,森田らが生活のしやすさに関する質問票を用いたスクリーニングを行い一定の成果を挙げているが,多施設への導入に関しては運用上の困難があり,患者の反応も様々であった(文献4,5)。

【文献】


1) Carlson LE, et al:J Clin Oncol. 2012;30(11):1160-77.
2) Mitchel AJ, et al:Cancer. 2012;118(24):6260-9.
3) Hollingworth W, et al:J Clin Oncol. 2013;31(29):3631-8.
4) Morita T, et al:Support Care Cancer. 2008;16(1):101-7.
5) 木澤義之, 他:Palliative Care Res. 2012;7(2):172-84.

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