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脳血管障害でのアストロ─オリゴ─ミクログリアの働き

No.4771 (2015年10月03日発行) P.53

髙橋愼一 (慶應義塾大学神経内科准教授)

登録日: 2015-10-03

最終更新日: 2016-10-26

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アストログリアは,ニューロンの機能維持のための微小循環環境の制御に重要な働きを有する。一方で脳血管障害,特に脳虚血ではニューロンに対する保護・障害作用の両方を示し,一元的には理解しにくい。近年,微小血管─アストログリア─ニューロンを中核とするneurovascular unitに,オリゴデンドログリア,ミクログリアを加えたグリア系細胞ネットワークを組み込んで病態制御をめざす試みがある。ヒトの脳で特徴的なのは白質容量の大きさで,オリゴデンドログリアの機能は重要である。また,脳虚血における炎症の関与が注目され,内在性免疫監視細胞のミクログリアも注目されている。髄鞘再生は脳卒中のみならず慢性虚血での白質病変の治療にも関係し,オリゴデンドログリアの再生は重要な治療戦略となる。
髄鞘の細胞膜コレステロール合成にケトン体が重要である可能性が示され,アストログリアの高いケトン体(βヒドロキシ酪酸)産生能が明らかとなった。脳血管障害,てんかん患者でのケトン体の持つ神経保護効果が確認されているが,そのメカニズムは多様である(文献1)。さらに,βヒドロキシ酪酸が炎症性細胞に発現するナイアシン受容体HCA2に対するリガンド作用を介して,脳血管障害を軽減するという報告(文献2)が注目されている。ミクログリアにもHCA2受容体の存在が確認されており,ケトン体を介したアストロ─オリゴ─ミクログリアの脳内グリア系ネットワークの解明と,脳血管障害の新規治療の開発が待たれる。

【文献】


1) 髙橋愼一:Annual Review神経2015. 鈴木則宏, 他,編. 中外医学社, 2015, p196-203.
2) Rahman M, et al:Nat Commun. 2014;5:3944.

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