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注目される全身性炎症性疾患としての乾癬

No.4772 (2015年10月10日発行) P.49

小川 靖 (名古屋大学皮膚科)

秋山真志 (名古屋大学皮膚科教授)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-10-26

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乾癬,中でも重症乾癬の患者には,血管病変および,肥満やメタボリックシンドロームの合併が多いことが以前から知られていた。近年,生物学的製剤の普及により,強力な乾癬治療が行えるようになったことに併せて「全身の炎症性疾患としての乾癬」の側面がさらに注目されている。近年の報告では,重症乾癬患者で心血管疾患による死亡が1.5倍程度,虚血性脳血管障害のリスクが1.2~1.6倍程度に発上昇すると推定されている。また,メタボリックシンドロームの有病率も2倍前後に上昇すると推定されている。
一方で,誌面の制約上詳細は省くが,乾癬と全身炎症の関わりは,分子生物学的な立場からも詳しく説明されるようになってきている。乾癬にメタボリックシンドロームが伴う場合,慢性炎症を伴う皮膚と脂肪組織が相互に作用し,全身性の炎症を促進するフィードバックを形成していると考えられるようになってきた。これらの結果として,インスリン抵抗性,血管内皮機能の障害,粥状硬化などが生じ,最終的に心血管障害や脳血管障害,耐糖能異常を引き起こすという説が提唱されている。
乾癬の皮膚病変を積極的に治療することは,実際に心筋梗塞を予防したり,寿命を延ばしたりすることにつながるのか。この疑問については,まだようやくデータが出はじめたばかりではあるが,いくつか肯定的な結果が報告されてきている。例として,抗TNF-α阻害薬などの全身治療を行った重症乾癬の患者では心筋梗塞の発生率が低下することが,米国やデンマークのグループから報告されている。今後,より多くの長期の前向き研究により明らかになってくるものと期待される。

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