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ウイルス感染と血球貪食症候群 【重症熱性血小板減少症候群では重篤なHPSを合併し,死に至ることもある】

No.4781 (2015年12月12日発行) P.53

安川正貴 (愛媛大学血液・免疫・感染症内科学教授)

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-26

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血球貪食症候群(HPS)とは,リンパ網内系組織で組織球が活性化し,自己血球を貪食した組織像が認められる病態の総称である。主な臨床症状には,発熱,汎血球減少症,肝機能障害,凝固異常,肝脾腫などがあり,基礎疾患に起因する高炎症性サイトカイン血症が病態の中心と考えられている。HPSは基礎疾患によって,大きく遺伝性と続発性に分類される。続発性の基礎疾患としては,様々な感染症,悪性リンパ腫を中心とする悪性腫瘍,自己免疫疾患などがある。とりわけ,EBウイルスなどのウイルス感染症はHPSの重要な原因のひとつに挙げられる(文献1)。また最近,西日本を中心に報告が相次いでいる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は,しばしば重篤なHPSを合併し,死に至ることも稀ではない。
HPSの原因となるウイルスで最も頻度が高いものはEBウイルスである。そのほか,HIVやサイトメガロウイルスもHPSを合併しやすい。抗てんかん薬などの薬剤起因性HPSは,ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)再活性化を伴う薬剤性過敏症症候群(DIHS)の可能性が高く,HHV-6再活性化の検索が必要である。
HPSの治療方針決定には,基礎疾患の正確な診断が不可欠である。高炎症性サイトカイン血症の是正目的で行う免疫抑制療法などはあくまでも対症療法で,基礎疾患の治療が中心となる。HPSは様々なウイルス感染で引き起こされ,しばしば重篤化するため,その基礎的知識と初期対応はすべての臨床医に求められるべきである。

【文献】


1) Ishii E, et al:Int J Hematol. 2007;86(1):58-65.

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