気道確保は命をつなぐために大切な手技のひとつであり,確実な気道確保の手段として気管挿管がある。気管挿管とは声門を直視し,そこに挿管チューブを挿入することをいうが,そのままでは見えない声門を見えるようにするのが喉頭鏡である。マッキントッシュ型喉頭鏡は1943年にイギリスの麻酔科医Macintoshによって開発された,今日まで気管挿管に用いられている代表的器具である。この喉頭鏡の欠点は,どのように展開を工夫しても声門を直視できない場合があることである。近年,技術の進歩によりこれを克服する方法が開発された。その1つがビデオ喉頭鏡である。
現在,様々なビデオ喉頭鏡が開発されているが,ちょうど喉頭鏡の先端にカメラのレンズが付いたようなもので,これによって喉頭展開では直視できなくても,ストレスを与えることなく先端のカメラからモニターを介して声門が見えるようになり,挿管が可能になる。資格を持つ救急救命士は心肺機能停止の傷病者に対し気管挿管を行えるが,ある種のビデオ喉頭鏡は彼らにも使用が認められている。ドクターヘリなど限られたスペースでも挿管が可能で,活用されている。
また,形状や使用感が従来の喉頭鏡とほとんど変わらないビデオ喉頭鏡が開発され,比較的安価でコストパフォーマンスが良いことから,マッキントッシュ型喉頭鏡をこれに入れ替えている施設も多く,長年使われてきた従来の喉頭鏡を“駆逐”する可能性もある。最後に,どうしても挿管が困難な場合に備え,輪状甲状靱帯切開の手技は必要なスキルである。