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カルシウムの経口摂取を増やしても骨密度は改善しない?

No.4791 (2016年02月20日発行) P.54

片井みゆき (東京女子医科大学東医療センター 性差医療部准教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-26

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閉経後女性や高齢男性にとって,骨粗鬆症予防は健康寿命をのばす上で重要な課題のひとつである。食事からのカルシウム(Ca)摂取増量やCaサプリメント摂取で骨密度が増加するかについて,システマティックレビューを用いた解析結果が発表された(文献1)。解析に用いられた論文の条件は,被験者が50歳以上,骨折をアウトカムとし,食事によるCa摂取,牛乳または乳製品摂取,Caサプリメント(ビタミンD併用の有無は問わず)摂取との関連を検討した,無作為化比較対照試験またはコホート研究である。
その結果,59の無作為化比較対照試験が該当し,15試験が食事によるCa摂取(n=1533),51試験がCaサプリメント摂取(n=1万2257)との関連を検討していた。施設入所中で食事性Ca摂取が低量で虚弱な高齢女性を対象とした1試験でのみ骨折リスクの有意な低下がみられたが,それ以外は,男女とも食事によるCa摂取,Caサプリメントの単独摂取,CaとビタミンD併用摂取いずれも,骨密度の増加ないし骨折率の低下に関連性はみられなかった。
高齢者は骨折予防として1000~1200mg/日以上のCa摂取が推奨されており,そのためにCaサプリメントを服用する人も多い。しかし,今回の結果からはCaの経口摂取がもれなく骨密度を上昇させるとは言えず,こうした努力が実を結ばない可能性を示唆した。

【文献】


1) Bolland MJ, et al:BMJ. 2015;351:h4580.

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