膀胱尿管逆流症(VUR)は小児尿路感染症の原因として最も多い疾患である。
小児VURは年齢とともに自然軽快,消失するものであり,予防的抗菌薬内服で経過観察を行う。しかし,予防内服下でも尿路感染をきたす症例,腎瘢痕が形成されている症例や高度な逆流がある症例は,手術療法が選択される。
手術療法には,従来から行われている開腹手術による逆流防止手術がある。開腹手術は恥骨上に3~4cm程度の横切開をおき,逆流防止機構を再建する。再建法には膀胱を切開し膀胱内から行う方法と,膀胱を開けずに膀胱外から行う方法がある。小児にとっては比較的大きな皮膚切開を要するが,手術成績は安定しており,術後のVUR再発率は5%未満との報告も多い(文献1)。腹腔鏡手術で逆流防止手術を行う施設もあるが,創は小さいながら下着に隠れない部分に術創ができ,整容的な問題が残されている。
また,2010年末よりわが国では,経尿道的内視鏡で尿管口にヒアルロン酸を注入して補強する手術も行われている。低侵襲であり入院期間も短い手術であるが,再発率が20%前後と報告されており,開腹手術より再発の可能性は高い(文献2)。
以上のように,近年,小児VURの治療は選択肢が増えている。ただし,治療効果,侵襲度のバランスを考慮すると,従来からの開腹手術に完全にとって代わるものはいまだなく,さらに高い治療効果と低侵襲な外科的治療が望まれる。
1) Marchini GS, et al:J Urol. 2011;185(5):1870-5.
2) Lee EK, et al:J Urol. 2009;181(4):1869-74.