勤務医の不足や偏在が社会問題となる中,その対策として「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」が打ち出され,薬剤師には薬剤の専門家として,主体的に薬物療法に参加することが求められている。大分大学医学部附属病院薬剤部では,医師の業務負担の軽減,医療安全の向上に取り組んでおり,2013年6月から救命救急センター(同年10月,高度救命救急センターに指定)において,薬剤師による治療薬物モニタリング(TDM)検査オーダ入力支援業務を開始した。今回,その有用性について評価を行った結果,薬剤師による入力支援業務は,救命救急医の業務量軽減だけでなく,適切なタイミングでのTDMの実施に役立ち,さらには薬剤師の介入が薬剤の適正使用に貢献すると考えられた。
救急医療には重篤な患者が多く,麻酔薬,筋弛緩薬,循環器系薬などのハイリスク薬が多用される。また,刻々と変化する患者の容態に応じて処方が頻回に変更され,多剤併用されることから,医薬品の管理がきわめて重要である。さらに,複数の薬剤が同時に使用されることで,相互作用の問題や臓器不全に伴う薬物動態の変化などが起こりうることから,治療効果の確保および副作用の回避のために,適切な治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)を実施することが必要となる。そこで大分大学医学部附属病院(以下,当院)では,2013年10月の高度救命救急センター指定以降,配置した薬剤師が薬剤管理指導業務や医薬品管理業務を実施し,患者を直接観察しながら薬物投与計画に積極的な介入を行っていた。
2010年4月30日に発出された厚生労働省医政局長通知1)において,医療の推進と医師の業務負荷軽減を図るために,現行法下で薬剤師が実践できる業務として9つの項目が挙げられた。その中のひとつには,「薬剤の種類,投与量,投与方法,投与期間等の変更や検査のオーダについて,医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき,専門的知見の活用を通じて,医師等と協働して実施すること」が示されており,とりわけ,薬剤師の積極的な関与が望まれた。これを受け,当院では薬剤師によるTDM検査オーダ入力支援(以下,TDMオーダ入力)を2013年6月より開始した。今回は,その入力支援の有用性について評価を行ったので報告する。
残り3,226文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する