眼瞼下垂とは,眼瞼が下がることにより,上方視野が狭くなる疾患である。病因は加齢(退行性)が最も多く,長年のコンタクトレンズ装用も重要な原因とされている。特にハードレンズ装用者はリスクが20倍も高くなると言われている。眼瞼下垂の問題点は視野欠損だけではなく,開瞼困難のため常に顎を上げて見る姿勢をするために,肩こりや頭痛の一因になると考えられる。
発症原因は,眼瞼挙筋腱膜の菲薄,瞼板からの解離である。有効な治療法は手術で,標準術式は眼瞼挙筋短縮術である。高齢者は皮膚弛緩を合併するケースが多いため,同時に皮膚を切除し重瞼形成術を行う。最近,CO2レーザー,高周波メス使用による小切開,低侵襲な術式が導入されており,両眼同時手術が可能となり,ダウンタイム(術後の回復期間)も大幅に短縮されている。
眼瞼下垂によるquality of vision(QOV)は,正面視の際の上方視野欠損のほか,読書など近距離作業にも不自由を感じ,目の疲れなどからQOLの低下に深く関与しているとの報告がある。近年,眼瞼下垂術後の角膜乱視の低下や高次収差の軽減が明らかになった。術後,上眼瞼の位置の変化が角膜形態に影響を与え,倒乱視の軽減,QOVの改善につながる。また,眼瞼挙筋群のMueller筋を支配する交感神経のバランスが改善され,頭痛,肩こりも軽減されるのではないかと言われている。
今後,さらに進む超高齢社会において,眼瞼下垂患者の増加が推測される。眼瞼下垂はQOV & QOLに大きく影響を及ぼす疾患であることから,正しい診断および適切な治療が求められる。
【解説】
鄭 暁東 愛媛大学眼科准教授