第69回日本医師会設立記念医学大会が1日に開かれ、医学賞を受賞した澤芳樹氏(阪大心臓血管外科教授)が講演した。iPS細胞を用いた心筋再生治療の研究について「安全性のところの最終第四コーナーを回っている」と進捗状況を報告した。
澤氏は拡張型心筋症患者の心臓に本人の脚の筋肉から培養して作製した「筋芽細胞シート」を張り、心機能を回復させる再生医療に2007年、世界で初めて成功。筋芽細胞シート「ハートシート」が昨年9月に薬事承認され、今年1月から保険適用となったことについて、「これはゴールではなくスタート」と述べた。
iPS細胞から作製した心筋細胞シートの研究については、安全性の確立に向け①未分化iPS細胞の残存、②ゲノム変異─の2点を解決することが課題と説明。①の未分化のiPS細胞が心筋に残ることで起こるテラトーマに対しては、既存のCD30抗体医薬によって未分化iPS細胞を除去する方法の確立を目指しているという。②のiPS細胞を心筋細胞に分化誘導する中でゲノム変異が起こらないかという課題については、京大iPS細胞研究所とともに検証を進めていく方針であると説明。ファースト・イン・ヒューマン試験も近いとの考えを示し、「日本から再生医療を世界に発信し、重症心不全を克服する日もそう遠くないと考えている」と講演を締めくくった。