糖尿病患者の増加は著しく,それに伴い,合併症である糖尿病腎症による透析導入者数の増加も顕著となっています。糖尿病予備軍対策,糖尿病患者対策などの目的で,2005年に日本糖尿病対策推進会議が日本医師会・日本糖尿病学会・日本糖尿病協会で設立され,活動が開始されています。各都道府県にも同様の組織が設置されました。2016年3月24日に厚生労働省・日本糖尿病対策推進会議・日本医師会で協定が締結され,これに基づき策定された「糖尿病腎症重症化予防プログラム」を各都道府県でも実施することになりました。そこで,糖尿病腎症の重症化予防の指導ポイントについてご教示下さい。金沢医科大学・古家大祐先生にお願いします。
【質問者】
伊藤千賀子 Grand Tower Medical Court理事長
微量アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿を呈する糖尿病腎症を合併した患者は,それぞれ全体の約30%,10%を占めます。もちろん,腎不全に至った糖尿病腎症の患者も約3~4%います。さらに,血清クレアチニン(Cr)を用いた推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)値が60mL/分/1.73m2以上の正常アルブミン尿の患者も約10%強でみられますので,合計すると半数以上が糖尿病腎症を合併していると言っても過言ではありません。
まず,糖尿病腎症の病期を正確に把握しなければ,重症化予防につなげることはできません。つまり,尿検査によるアルブミン尿の定量と腎機能の把握が必須です。またこの2項目は,経過フォローした際に実践している治療が功を奏し,重症化予防につながっていると判定できる指標となります。
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