respiratory syncytial virus(RSV)は,気管支炎や肺炎を引き起こすウイルスであり,わが国では,2歳までにほぼ100%初感染する一般的な感染症である。無症状で初感染を終える場合も多いが,RSVによる1歳未満の死亡率は,インフルエンザウイルスの2倍以上とも報告されている1)。そのため,低出生体重児や先天性心疾患を有する乳幼児には,抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(シナジスⓇ)の投与が保険適用となっている。
一方,法医解剖では,出生発育に問題のない1歳以上の幼児で,RSV陽性の突然死を経験する。典型的な経過としては,日中,元気に遊んでいた子どもが,夜間,急に発熱・急変し,救急搬送され迅速検査でRSV陽性となるが,血液検査や胸部X線では炎症を確認できずに死亡する。このような症例では,解剖で気管支炎や脳浮腫は認めるものの,遺伝子解析でも免疫不全などの先天性疾患は検出できない。
この病態として近年注目されているのが,IL-6やIL-8などのサイトカインである。RSV関連突然死例では,血液中で複数のサイトカインが著増していることが多い。サイトカインストームと呼ばれるこの状態が,急性呼吸不全や急性脳症による突然死を引き起こしている可能性がある2)。
【文献】
1) Thompson WW, et al:JAMA. 2003;289(2):179-86.
2) Kakimoto Y, et al:Pediatrics. 2016;138(6): e20161293.
【解説】
垣本由布 東海大学基盤診療学系法医学