【質問者】
宮川義隆 埼玉医科大学総合診療内科(血液)教授
リンパ腫領域のみならず,臨床腫瘍学の複数の領域において,免疫チェックポイント阻害薬や細胞内signal pathwayを標的とする分子標的療法の臨床開発が進められています。両者はその作用機序の違いから開発targetとなる疾患群が異なるため,各々の開発状況を記載します。
(1)免疫チェックポイント阻害薬
リンパ腫に対する免疫療法として,その高い有効性が最初に注目を集めたのは,再発/治療抵抗性classical Hodgkin lymphoma(cHL)に対する抗programmed death-1(PD-1)抗体療法です。
Ansellらは,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDC/ASCT)やブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)を含む濃厚な治療歴を有する,再発/治療抵抗性cHL患者23人を対象としてニボルマブ(3mg/kg,2週間ごと)の安全性と有効性を評価する第Ⅰ相試験を行い,全奏効割合87%(完全奏効割合17%/部分奏効割合70%),24週時点でのprogression-free survival(PFS)86%という高い有効性を報告しました1)。引き続く第Ⅱ相試験で全奏効割合66%(53/80)と,より多くの患者で高い有効性が確認されました。Grade 3以上の有害事象として,好中球減少,リパーゼ上昇,感染症などが認められましたが,いずれも頻度は5%以下でした2)。こうした結果に基づき,米国Food and Drug Administration(FDA)は2016年5月にHDC/ASCT後の再発/治療抵抗性cHLに対するニボルマブ単剤療法を承認しました。別の抗PD-1抗体であるpembrolizumabに関してもニボルマブと同様,cHLに対する高い有効性が報告され,臨床開発が進められています3)。
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