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悪性リンパ腫に対する新しい免疫チェックポイント阻害薬とシグナル伝達阻害薬の展望 【ニボルマブやイブルチニブなど,複数の新薬に関する有用性が報告され,注目を集めている】

No.4840 (2017年01月28日発行) P.57

宮川義隆 (埼玉医科大学総合診療内科(血液)教授)

蒔田真一 (国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)

飛内賢正 (国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科 科長)

登録日: 2017-01-25

最終更新日: 2017-01-24

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  • 再発・難治例の悪性リンパ腫に対して,欧米では免疫チェックポイント阻害薬とシグナル伝達阻害薬が臨床応用されています。国内では,ホジキンリンパ腫に対して微小管阻害薬が結合した抗体医薬アドセトリス®,非小細胞肺癌に対して免疫力を高めるオプジーボ®が承認されていますが,欧米と比べて数年のドラッグラグがあります。今後,癌細胞の増殖に必要なシグナル伝達経路であるPI3キナーゼ,ブルトン型チロシンキナーゼなどの阻害薬が国内でも承認されることが期待されますが,これらの新薬によりリンパ系腫瘍に対する治療戦略がどのように変わるのか,国立がん研究センター中央病院・飛内賢正先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    宮川義隆 埼玉医科大学総合診療内科(血液)教授


    【回答】

    リンパ腫領域のみならず,臨床腫瘍学の複数の領域において,免疫チェックポイント阻害薬や細胞内signal pathwayを標的とする分子標的療法の臨床開発が進められています。両者はその作用機序の違いから開発targetとなる疾患群が異なるため,各々の開発状況を記載します。

    (1)免疫チェックポイント阻害薬
    リンパ腫に対する免疫療法として,その高い有効性が最初に注目を集めたのは,再発/治療抵抗性classical Hodgkin lymphoma(cHL)に対する抗programmed death-1(PD-1)抗体療法です。

    Ansellらは,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDC/ASCT)やブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス®)を含む濃厚な治療歴を有する,再発/治療抵抗性cHL患者23人を対象としてニボルマブ(3mg/kg,2週間ごと)の安全性と有効性を評価する第Ⅰ相試験を行い,全奏効割合87%(完全奏効割合17%/部分奏効割合70%),24週時点でのprogression-free survival(PFS)86%という高い有効性を報告しました1)。引き続く第Ⅱ相試験で全奏効割合66%(53/80)と,より多くの患者で高い有効性が確認されました。Grade 3以上の有害事象として,好中球減少,リパーゼ上昇,感染症などが認められましたが,いずれも頻度は5%以下でした2)。こうした結果に基づき,米国Food and Drug Administration(FDA)は2016年5月にHDC/ASCT後の再発/治療抵抗性cHLに対するニボルマブ単剤療法を承認しました。別の抗PD-1抗体であるpembrolizumabに関してもニボルマブと同様,cHLに対する高い有効性が報告され,臨床開発が進められています3)

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