医療事故調査制度(用語解説)の「医療事故調査・支援センター」を運営する日本医療安全調査機構は1月31日、係争事例の調査依頼があった場合の対応を明らかにした。事故調査を行った上で、調査報告書の冒頭に裁判等の資料として使用されるために作成されたものではないことを記載するなどとした。
同制度は医療事故の再発防止、医療安全の確保を目的に2015年10月からスタートした。医療事故が発生した医療機関は院内調査を行い、調査結果を第三者機関であるセンターに報告。センターに報告された事例で医療機関や遺族から再調査の依頼があった場合にはセンターも調査を行い、医療機関と遺族に報告する。ただ、再発防止のために作成された調査報告書が訴訟に使用される可能性は制度開始以前から懸念されてきた問題だった。
昨年、民事裁判中の事例について医療機関がセンターに調査依頼したことを受けて日本医療安全調査機構が対応を協議。その結果を31日、機構に設置された医療事故調査・支援事業運営委員会に報告した。
委員会では木村壯介機構常務理事が、「本制度は医師法21条や裁判とは別の立場で調査する制度」と強調し、係争事例でも「粛々と調査する」との方針を説明。その上で、①報告書の冒頭に「裁判等の資料として使用されるために作成されたものではない」などと記載する、②再発防止に必要としない個々の責任に関する情報には言及しない、③調査に関わる委員に証人喚問や意見が求められた場合は基本的に対応しない─との方針を決定し、関連する規約を改訂することを報告した。