大腸癌研究会は昨年11月、『遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版』を発刊した。12年に初めて遺伝性大腸がんに関するガイドライン(GL)を出して以来、4年ぶりの改訂となった。家族性大腸腺腫症(FAP)とリンチ症候群の2つの遺伝性腫瘍について、臨床像、がん化のメカニズム、診断、治療、サーベイランス、遺伝カウンセリングと家族への対応まで、日本人のデータを盛り込み、分かりやすく解説している。
FAPは、APC遺伝子の変異を原因とし、大腸腺腫(ポリープ)が通常100個以上発生し、放置すれば60歳頃までにほぼ100%大腸がんを発症する。全大腸がん患者の1%未満がFAPによるもので、わが国では1万7400人に1人がFAPと推計される。
同ガイドラインでは、FAPに対する予防的手術法として、「大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術(IPAA)が標準的術式」と推奨。非密生型や直腸に腺腫が少ない患者には、「回腸全摘・回腸直腸吻合術(IRA)も選択肢」とした。また、一般には20代で予防手術を受けることが多いとしつつ、手術の推奨年齢は、「性別、大腸腺腫の密度、癌化の有無、随伴病変のほかに患者の社会的背景などを総合的に考慮した上で決定する」と、リスクや患者の状況に応じた柔軟な対応を求めている。
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