骨粗鬆症治療の基本は骨吸収抑制薬である
骨吸収抑制薬にはビスホスホネート製剤,デノスマブ,選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)およびエルデカルシトールがある
患者の骨折リスクと,各々の薬剤の持つ骨折抑制効果および長期使用における安全性に基づいて治療薬を選択する
骨粗鬆症治療は長期に及ぶため,治療薬の切り替えについても検討が必要となる
骨粗鬆症治療の目的は骨折の予防である。アレンドロネートに代表される窒素含有ビスホスホネート製剤の登場以降に骨粗鬆症治療薬として承認された薬剤はすべて,何らかの骨折抑制効果が実証されたものである。しかしながら,その作用機序や薬剤特性および臨床的有用性はそれぞれ異なっており,それらを理解した上で,対象となる患者に適した薬剤を選択することが大切である1)。
骨粗鬆症治療薬の作用点は,腸管(十二指腸・小腸近位部)からのカルシウム吸収促進,骨形成促進および骨吸収抑制の3箇所である(図1)。このうち,腸管からのカルシウム吸収促進にはもっぱら活性型ビタミンD3製剤が貢献する。骨形成促進は,骨芽細胞の活性化によりもたらされる。現在,骨芽細胞を活性化することが実証されている薬剤はテリパラチドのみである。骨吸収抑制は,破骨細胞の形成あるいは機能を阻害することで得られる。
現在,骨粗鬆症治療の基本は骨吸収抑制薬であるが,その作用機序は多彩である。ビスホスホネート製剤は,骨基質に蓄積した後に骨吸収の過程で破骨細胞に取り込まれてその機能を阻害する。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator:SERM)は,主に骨芽細胞に作用して,その破骨細胞形成支持能を妨げると考えられている。SERMはエストロゲン受容体を介して作用する薬剤であり,破骨細胞への直接作用も推測されている。デノスマブは,破骨細胞形成と活性化に不可欠なサイトカインであるRANKL(receptor activator NF-κB ligand)に対する中和抗体である。また,活性型ビタミンD3 製剤の1つであるエルデカルシトールは,破骨細胞形成に必須の転写因子であるc-fosの発現を抑制する作用を有しており,ビタミンD3 製剤でありながら,骨吸収抑制作用を発揮する。
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