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(3)カテプシンK阻害薬による骨粗鬆症治療の可能性 [特集:進化する骨粗鬆症治療]

No.4719 (2014年10月04日発行) P.34

中村利孝 (国立国際医療研究センター病院院長)

登録日: 2016-11-08

最終更新日: 2017-03-23

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  • カテプシンKは破骨細胞から分泌されるコラーゲン分解酵素である

    カテプシンK阻害薬odanacatibは骨吸収機能を選択的に抑制し骨形成の抑制が少ない

    odanacatibの腰椎骨密度増加効果は直線的で経年的に減衰しない

    odanacatibでは大腿骨近位部,頸部などの骨密度も経年的に増加する

    骨折リスク低下効果を明らかにするための大規模臨床試験が進行中である

    1. カテプシンK阻害薬の新規性とodanacatib

    骨粗鬆症の標準的治療薬は骨吸収抑制薬である。ビスホスホネート製剤を代表とする現在の骨吸収抑制薬は,破骨細胞による骨芽細胞誘導能を低下させ,二次的に骨形成も抑制する。カテプシンK阻害薬は,破骨細胞の骨吸収機能を抑制し,細胞の分化や寿命には影響しない。このため,従来の骨吸収抑制薬より骨形成の抑制が少ないことが期待される。
    破骨細胞は酸とカテプシンKを主とした蛋白分解酵素を分泌して,骨ミネラルの溶解とコラーゲンの分解により,骨組織を破壊・吸収する。カテプシンKが阻害されると,破骨細胞による骨のコラーゲン分解が阻害される。カテプシンK阻害薬にはbalicatib,relacatib,odanacatibなどがある。balicatibはカテプシンB,Lなどの阻害作用もみられ,モルフェア様の皮膚症状発現のため開発は中止された。relacatibはカテプシンL,V,Sなどの阻害作用もある。現在のところodanacatibの臨床開発が最も進んでいる。odanacatibは破骨細胞に取り込まれ,カテプシンKの細胞外への分泌を阻害する。破骨細胞の分化には影響せず,細胞死の誘導もない。骨芽細胞や骨細胞には影響しない1)

    2. 動物モデルでの効果

    カテプシンKの活性中心のアミノ酸配列は,動物種により大きく異なり,odanacatibは,ラット,マウスでは効果が発現しにくい。そのため,動物モデルではウサギとサルで検討されている。Pennypackerら2)は,6カ月齢のニュージーランド白ウサギに卵巣摘出手術を行い,偽手術(sham)群,対照群,odanacatib(ODN)投与群,アレンドロネート(ALN)投与群にわけ,27週間の飼育試験を行った。その結果,DXA装置による腰椎の骨密度値は,対照群ではsham群より約8.8%有意に低下し,ODN,ALN両群ともsham群と同じレベルに維持された。腰椎海綿骨の骨組織計測により求めた骨形成率は,sham群に対し対照群では約1.96倍で,ALN群では約0.98倍と増加が抑制されたが,ODN群では約1.61倍と抑制されず,ALN群よりも高いレベルであった。
    Masarachiaら3)は成熟したアカゲザルに卵巣摘出手術を行い,sham群,対照群,ODN群にわけ,21カ月間の観察を行った4)。その結果,腰椎骨密度は対照群ではsham群より小さく,ODN群ではsham群と同じレベルを維持した。大腿骨近位部の骨密度も近位部全体および頸部ともにsham群と同じレベルに維持された。対照群ではsham群に対し,尿中NTX,血清CTXなどの骨吸収マーカーと血清P1NP,骨型ALPなどの骨形成マーカーが上昇した。ODN群では骨吸収マーカーはsham群に対し低下したが,骨形成マーカーはsham群と同じレベルに維持された。また,破骨細胞の数を反映するマーカーである血清TRAP-5bは,sham群に対し対照群とODN群ではほぼ同じ程度に増加した。腰椎海綿骨の骨組織計測による骨形成率は,ODN群では対照群よりも低下した。しかし,大腿骨の皮質骨内部では低下していたが,骨髄側では対照群と同じレベルに維持され,外側の骨膜面ではむしろ増加した。腰椎,大腿骨頸部ともに骨密度の増加に応じて骨強度が増加していた。
    これらの動物モデルにおけるodanacatibの効果をまとめると,以下のようになる。
    ①骨密度と骨強度は腰椎,大腿骨ともに維持ないし増加する,②全身的なレベルでは骨吸収マーカーは抑制されるが,骨形成マーカーの抑制は軽度である,③局所的な骨組織の計測による骨形成率はウサギでは抑制されず,サルでは部位により異なる。
    これらの観察事実は,odanacatibは骨吸収抑制効果を発揮するとともに,骨形成の抑制はそれほど強くなく,その効果は動物や骨の部位によっても異なることを示唆している。

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