【質問者】
小口正彦 がん研有明病院放射線治療部部長
PCNSLは大部分が大脳に発生し,90%以上がびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)です。ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染症に併発するPCNSLと免疫健常者に発生するPCNSLにわけられますが,後者の頻度が少しずつ増加していると言われています。ここでは免疫健常者に発生するPCNSLについて述べます。
脳以外のリンパ腫と異なり,PCNSLは中枢神経系に病変が限局することが多いのが特徴ですが,眼球内進展が20%程度に認められるため,病期診断に眼科診察が必須です。また,睾丸の精査を行い,睾丸のリンパ腫を否定することも重要です。PCNSLでは脳血管関門があるために,脳以外のDLBCLで使用されるシクロホスファミド水和物,ドキソルビシン塩酸塩,ビンクリスチン硫酸塩,プレドニゾロンを組み合わせるCHOP療法は無効で,3g/sqm以上の大量メトトレキサート(メトトレキセート®)(high dose methotrexate:H DMTX)を中心とした化学療法が主体となります。従来は,全脳照射が大きな役割を果たしましたが,化学療法と全脳照射を併用すると,特に60歳以上の高齢者では,白質脳症に起因する認知機能の障害が高頻度で発生するため,高齢者では化学療法のみで治療し,再発時にのみ放射線治療を施行するようになってきています。
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