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(5)腎機能障害合併例でも降圧目標値を120mmHgとすべきか [特集:見直し! 高齢者高血圧治療 ─SPRINT試験の衝撃から]

No.4847 (2017年03月18日発行) P.56

木村健二郎 (JCHO東京高輪病院院長)

登録日: 2017-03-17

最終更新日: 2017-03-14

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  • SPRINT試験に組み込まれた慢性腎臓病(CKD)は,非糖尿病で尿蛋白陰性の腎硬化症が主体と思われる

    SPRINT試験に組み込まれたCKDのサブグループ解析では,腎のアウトカムに関して,厳格降圧群の優位性は示されなかった

    SPRINT試験の厳格降圧群では,RAS阻害薬+利尿薬によると思われる急性腎障害や電解質異常の頻度が高かった

    日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」では,非糖尿病で尿蛋白陰性のCKD(主として腎硬化症)の降圧目標を<140mmHgとしているが,SPRINT試験の結果はこの降圧目標を<120mmHgに下げる妥当性を示していない

    1. SPRINT試験における慢性腎臓病(CKD)

    SPRINT試験1)では,目標血圧<120mmHgの厳格降圧群が目標血圧<140mmHgの標準降圧群に比べて一次複合アウトカム(心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中,心不全または心血管疾患死)を25%減少させたことを示した。
    対象者は,50歳以上の非糖尿病高血圧患者で収縮期血圧が130~180mmHgおよび心血管疾患の危険因子を持っていることが選択基準である。心血管疾患の危険因子の中には,「多発性囊胞腎」を除いた慢性腎臓病(CKD)が含まれている。CKDの定義は,推定糸球体濾過量(estimate glomerular filtration rate:eGFR)(MDRD式による)が20~59mL/分/1.73m2で,1日1g以上の蛋白尿例は除外されている。したがって,本試験に組み込まれたCKDの多くは,加齢や高血圧を背景とする腎硬化症と思われる。
    無作為に割り付けられた両群には約28%のCKD患者が含まれていた。また,75歳以上の高齢も危険因子とされているが,両群には約28%含まれていた。CKD患者の年齢分布は不明であるが,高齢者ではCKDの発症頻度が高く,また尿蛋白陰性のCKDは高齢者に多いので2),本試験のCKD患者には高齢者が多く含まれていた可能性がある。
    CKDの有無で一次複合アウトカムに交互作用(interaction)はみられなかった(P=0.32)ため,CKDの有無に関係なく厳格降圧群では一貫して一次複合アウトカムのリスクが低下したと解釈されている。
    腎機能に関するアウトカムは,CKDの有無により異なる設定がなされている。CKD有りのサブグループでは,腎の複合アウトカム(eGFR 50%以上の低下または末期腎不全の発症)に厳格降圧群と標準降圧群で有意差はみられなかった(P=0.76)。eGFR 50%以上の低下と末期腎不全の発症それぞれに関しても同様であった(P=0.75;P=0.27)。一方,CKDなしのサブグループでは,腎のアウトカム(eGFR 30%以上の低下または60mL/分/1.73m2未満への低下)への到達は,厳格降圧群のほうが標準降圧群より有意に高頻度であった(年当たり1.21% vs. 0.35%,P<0.001)。

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