炎症性腸疾患は約20%が小児期に発症します。生涯にわたる治療が必要となるため、現在小児科で診ている患者も将来的には消化器内科の先生にケアをお願いしなければなりません。しかし、小児科から内科への「移行」は思っていた以上に難しいことが明らかとなり、最近になってようやく、わが国でも移行期医療の重要性が認識されはじめました。小児科医療にいつまでもとどまることは患者の自立や年齢相応の医療を受けることの妨げになるので、診療の場を成人科に移していく適切な方法を小児科と内科の双方で模索しなければならない時期にきています。
移行の目的は、患者が自らの健康管理に責任を持ち、長期的に適切な治療を継続することです。移行症例を経験された先生は、「小児期発症の患者は未熟で、家族の要求も強く、扱いにくい」と思われたことがあるかもしれません。思春期という多感な時期に生活を制限されたり、手術や合併症を経験した患者は心理社会的問題を生じやすいため、小児科はそのような問題を重視して診療にあたっています。また、治療を決める際に、成人では患者自身に重点が置かれるのに対して、小児では保護者が中心的な役割を担います。このように、小児科と内科では医療文化がそもそも異なるということをお互いに理解することが、移行を成功させる上では不可欠です。
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