以前はICUにおける治療の目的は救命であり,救命された患者の機能的予後は二の次と考えられていた。しかし救命率が向上し,退院した患者が長期生存するようになると,ICU在室時のケアが身体や精神の機能に及ぼす影響に注目が集まり,新しい概念が提唱されてきた
ICU-acquired weakness(ICUAW)とは,ICU在室中に生じる急性のびまん性筋力低下を指す。重症患者における筋力低下の原因としては,軸索障害型の神経障害や筋原性のもの(critical illness polyneuropathy/myopathy)が知られていたが,ICUAWはこれらを統合する概念である。ICUAWの予防目的に,理学療法や筋電気刺激が行われている。
post-intensive care syndrome(PICS)は,ICU退室後,退院後に生じる運動,認知,精神機能の障害を指す概念である。PICSの発症には,患者の疾患や重症度,ICUにおける医療・ケア介入,環境,患者の精神的要因が関与するとされている。予防法として,人工呼吸器装着患者に対するABCDEバンドル,ICU日記,早期離床・理学療法,認知療法などが挙げられている。
ICUにおける早期リハビリテーションは有用である可能性が高いが,ICUAWやPICSを予防するという明確なエビデンスが得られていない1)。今後,適切に設定されたRCTにより,その効果が証明されることが望まれる。
【文献】
1) 井上茂亮, 他:ICUとCCU. 2015;39(8):477-85.
【解説】
芳賀信彦 東京大学リハビリテーション医学教授