「医療給付実態調査」は医療保険のレセプトを対象とする全数調査である。レセプト調査といえば,「社会医療診療行為別調査」や「国民健康保険医療給付実態調査」が実に50年以上も前から行われてきたが,紙レセプトを全数調査できないので抽出調査であった。しかし,レセプト電子化が進んだため,2008年よりそれまでの国民健康保険医療給付実態調査を廃止し,すべての医療保険者を対象とする全数調査に生まれ変わった。全数調査になったため,それまで困難だった性・年齢階級別,傷病別,そして都道府県別の詳細な分析も可能になった。
ただし,医療保険の調査なので生活保護法による医療扶助は含まれておらず(医療扶助レセプトについては,別に「医療扶助実態調査」として行われている),また一部の保険者のカバー率は低い。2012年度版の記載によると「全国健康保険協会(協会),国民健康保険そして後期高齢者医療制度はほぼすべてのレセプトについて報告が得られているが,組合健保は8割弱,共済組合では4割程度」だという。
最新の2012年度をみると,調査に含まれるレセプト件数は約16.7億件,医療費の総額は約34兆円となっており,医療扶助や共済組合を除けば医療費のほぼすべてが網羅されている(表1)。医療費の4割が後期高齢者医療制度となっており,高齢化を反映して医療費が集中している傾向が読み取れる。診療種類別にみると,後期高齢者医療制度は入院と食事療養で医療費のちょうど50%を占め,国保は件数でも医療費でも34%を占めている。診療種類別の件数割合をみると,どの制度でも入院外の割合は54%で一定である。
各制度の医療費の割合を年齢階級別にみてみよう(表2)。国保では,65~74歳の前期高齢者で医療費のほぼ50%が費やされていることがわかる。
ハッシュ関数
医療給付実態調査とレセプト情報・特定健診等データベース(いわゆるナショナルデータベース)は同一個人を追跡できるように氏名や生年月日をハッシュ関数に暗号化して収集している。ハッシュ関数とは16進数の数値であり,0~9の数値とa,b,c,d,e,fの6つのアルファベットで表される。
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