外来がん治療で重要な課題とされる副作用の早期発見に向け、多職種SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)と連動した服薬適正化支援アプリの試行が、一部の基幹病院で始まった。抗がん剤治療の進歩により、がん治療の中心が入院から外来へシフトしている状況を踏まえ、中外製薬と医療介護従事者専用の完全非公開型SNS「MedicalCare Station(MCS)」*を運用する日本エンブレースが開発した。
服薬を支援するアプリは既に数多く存在するが、完全非公開型SNSと連動させて運用する取り組みは国内初となる。抗がん剤の副作用のマネジメントが必要な患者の服薬適正化を支援することが狙い。
抗がん剤副作用の早期発見が狙い
外来がん治療では、次回受診までの間に副作用が重篤化し、服薬を継続できないケースが見られる。これを回避するには副作用の早期発見と対策が重要なため、患者が自覚症状などについて記録し、医療従事者と速やかにコミュニケーションが可能となる仕組みを構築することが重要となる。
イメージ(図)としては、まず主治医が患者にMCSや服薬支援アプリの説明を行い、利用に同意した患者がアプリに服薬状況や体調などを記録してデータを送信することが基本になる。この入力内容がMCSのタイムラインに自動表示され、主治医や薬剤師、看護師などの多職種で情報共有する。体調が悪かったり服薬を中止するなどの情報があった場合には、主治医が「体調がすぐれませんか?どんな具合ですか?」などコミュニケーションを取り、迅速に患者の状態の変化に対応して重篤化を防ぐ。
試行運用は2016年11月から一部の基幹病院で既に開始。大腸がんまたは胃がんの術後補助化学療法中で、プロドラッグタイプの経口抗がん剤「ゼローダ」(一般名:カペシタビン)を服薬している外来患者を対象とする。ゼローダの主な副作用には、手足症候群、悪心、食欲不振、赤血球数減少、下痢、白血球数減少などがある。
*全国189の医師会、約2万4000の医療関連施設が正式採用している完全非公開型SNS。患者と医療従事者や医療従事者間のコミュニケーション機能を有する。