株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

多発性骨髄腫における同種造血幹細胞移植の適応【ハイリスク群に属する若年症例などに適応があると思われる】

No.4855 (2017年05月13日発行) P.53

藤 重夫 (国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科)

塚田信弘 (日本赤十字社医療センター血液内科副部長)

登録日: 2017-05-10

最終更新日: 2017-05-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 近年,多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)に対しては様々な新薬が使用可能となり,その治療戦略が大きく変わりました。同種造血幹細胞移植に関しては,現在では積極的に選択する施設が少ないようにも感じています。しかし,その中でもやはり予後不良の症例もあり,再発リスクの高い例に対しては同種造血幹細胞移植の役割はまだあるものと考えますが,適応の選択に関してはexpert opinionによるところが多いと思います。MMに対する同種造血幹細胞移植の適応に関して,日本赤十字社医療センター・塚田信弘先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    藤 重夫 国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科


    【回答】

    MMは,一般的に進行が緩徐であるものの治癒が困難な疾患です。疫学的には60〜70歳代の発症が多く,がん情報サービスによれば65歳未満の罹患数は全罹患数の約21%,55歳未満の罹患数は約6%にすぎません。

    (1)PI,IMiDsおよびHDM/ASCTによりMMの治療成績は飛躍的に向上
    自家移植併用大量化学療法(high-dose melphalan and autologous stem cell transplantation:HDM/ASCT)は65歳未満の適格症例に対し奏効を高め,無増悪生存率を向上させることが示されています。また2006年にボルテゾミブが承認されたのを皮切りに,2017年3月の時点で2種類のプロテアソーム阻害薬(proteasome inhibitor:PI),3種類の免疫調節薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)が投与可能となりました。これらのPI,IMiDs(いわゆる新規薬剤)およびHDM/ASCTにより,MMの治療成績は飛躍的に向上しています。

    MMは多様性に富む疾患で,約20%の症例は平均生存期間が10年以上である一方で,平均生存期間が約2年のハイリスクの症例が約20%存在するとされています(残りの約60%の平均生存期間は約7年)1)。ハイリスク群に属する若年の症例(55〜60歳未満)は同種造血幹細胞移植の適応があると考えます。

    残り553文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top