医療事故調査制度の第三者機関「医療事故調査・支援センター」に指定されている日本医療安全調査機構は先月、中心静脈穿刺合併症に係る医療事故の再発防止策を公表した。手技の適応を合議で決定するなど9つの提言を示している。
2015年10月に医療事故調査制度がスタートしてから、医療事故の再発防止策がまとまるのは初めて。中心静脈穿刺合併症は分析テーマの選定時点で最も多かった死亡事例で、以前から同様の事象が繰り返し発生していることから、再発防止策の最初のテーマに選ばれた。
提言は、「適応」「説明と納得」「穿刺手技」「カテーテルの位置確認」「患者管理」の項目に分けて提示(表)。「穿刺手技」については機構のホームページで解説動画も公開している。
このほか提言は学会や企業への提案として、①説明同意書の標準仕様書作成、②教育カリキュラムの確立、③実施記録用紙、患者観察チェックリストの標準仕様書作成、④穿刺器材の開発─を列挙した。
提言をまとめた宮田哲郎氏(同機構中心静脈穿刺合併症専門分析部会部会長、国際医療福祉大教授)は厚生労働省で開いた会見で、「中心静脈穿刺は日常的に行われている手技だからこそ、安全性が担保されなければならない」と強調。さらに「今回の提言は既にいくつかのガイドラインで述べられていることだが、いまだに医療事故が起こっており、いかに提言を周知するかが大事になる」と指摘。その上で、「今後同様の事例が発生した際には提言が実施されたかどうかを検証し、それを踏まえて提言の重みづけを考えたい」と述べた。