株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

末期腎不全の後期高齢者への腎透析療法の適応をどう考えるか?【変化する病状に合わせて医療チームとして判断する】

No.4856 (2017年05月20日発行) P.60

碓井知子 (東京大学保健・健康推進本部)

登録日: 2017-05-16

最終更新日: 2017-05-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • (1)後期高齢者で末期腎不全の患者の腎透析療法の適応について,本人および家族が希望する場合,しない場合に分けて。
    (2)透析療法の適応除外になるのはどのようなケースか,ご教示下さい。

    (千葉県M)


    【回答】

    進行した慢性腎臓病から末期腎不全に至るまでの患者に対して,透析療法や保存的治療も含めて,質の高い治療をどう選択し,提供していくかは,わが国のみならず世界各国の共通の課題です1)。フレイルな高齢末期腎不全患者が透析療法により得られる見込みのある利益と,治療により生じうる負担には表1のようなものがあります2)



    予後が非常に悪いと予想される患者の場合には,透析療法を行っても,延命,健康に関連したQOLや機能障害の改善につながらない可能性があります。日本透析医学会レジストリーを用いた検討では,透析療法開始時のADLが高度に障害された80歳以上の患者は,開始3カ月以内に36.5%が死亡していました3)。米国の平均年齢73歳の老人ホーム居住者では,透析療法開始自体がADL低下の危険因子であったと報告しています4)

    確立した予後の予測方法はありませんが,「この患者が1年以内に死亡したら驚きますか」という驚きについての質問方法は,臨床の場で早期の死亡を予測する際に使える簡単で有用な方法です5)。個別の患者にとって最適な治療選択の助けとなるガイドラインの作成が望まれますが,その根拠となるような研究が十分になされているとは言えません。わが国や海外での検討を参考に,患者にとってより適切な治療を選択する際に有用な情報を提供することが大切です。

    残り1,288文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top