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角膜再生医療の現状と今後【近年,様々な研究・開発がなされたものの,コストの問題から停滞しているのが現状】

No.4858 (2017年06月03日発行) P.60

神谷和孝 (北里大学医療衛生学部視覚生理学教授)

山上 聡 (日本大学医学部視覚科学系眼科学分野主任教授)

登録日: 2017-06-01

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  • 昨今注目されている角膜再生医療の現状と今後について,日本大学・山上 聡先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    神谷和孝 北里大学医療衛生学部視覚生理学教授



    【回答】

    わが国の眼科領域の再生医療は,細胞シート移植を中心とした多くの臨床経験を背景に,再生医療分野をリードしてきました。具体的には,幹細胞疲弊症と言われる上皮細胞がなくなってしまった眼に対する治療で,片眼性の場合には羊膜上培養自己角膜輪部上皮細胞シート移植,両眼性の場合には羊膜上培養自己口腔粘膜上皮細胞シート移植,また羊膜を基質として用いない温度応答性培養皿を用いた同様の細胞シートによる治療などが積極的に行われてきました。

    また最近は,水疱性角膜症に対する細胞注入療法を世界で初めて成功させるなど,今後の眼科医療を大きく変える可能性のある治療法も開発されてきています。iPS細胞を用いる治療も期待されており,iPS細胞を角膜上皮細胞様細胞に分化させることで角膜上皮細胞シートを作製,移植しようとの研究もなされています。しかし,患者本人のiPS細胞を用いて細胞シートを作製すると,患者1人当たり数千万円の費用がかかるため,iPSのバンクに登録されている中で組織適合抗原の相違が問題になりにくい細胞を使う方法の開発が進められていますが,それでも数百万円はかかります。また,この方法は,角膜上皮幹細胞,口腔粘膜ともに障害された疾患においてはメリットがあるものの,組織適合抗原が完全には一致していないため拒絶反応の危険性が高まること,角膜上皮細胞のように血管侵入を抑制する因子が含まれていない可能性が高いことなど,問題点は多く残されています。

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