脳振盪と診断した場合,受傷当日は練習や試合に復帰すべきではない
脳振盪を受傷後,自覚的・他覚的症状が消失するまでは競技復帰を許可しない
脳振盪患者の競技復帰に際して,特に小児や若年者では注意が必要である
脳振盪患者の競技復帰は,徐々に負荷を加える段階的競技復帰プロトコール(GRTP)に従うことが望ましい
急性硬膜下血腫などの器質的頭蓋内病変を認めた場合は,症状がなくなり画像上病変が消失しても,原則としてコンタクトスポーツへの競技復帰を許可すべきではない
脳振盪を起こした直後の競技への復帰は,これまで慣例的に行われてきた事実がある。しかしながら,日本脳神経外傷学会の中間提言1),第4回国際スポーツ脳振盪会議2)では,同日同ゲームへの復帰を原則として認めていない。これは,自覚症状が完全に消失しても,約1/3の症例で遅発性の症状が出現したことが根拠のひとつになっている。
脳振盪は7~10日でベースラインに回復し,8割は3週間以内に回復すると報告されている。この際に重要な点は,肉体的・精神的な休息(physical and cognitive rest)を十分にとることである2)3)。具体的に言えば,運動はもちろん,テレビゲーム,インターネット,スマートフォンに代表されるモバイル機器の使用といった集中力や注意を要するような活動も避ける必要がある。学生においては,学業や学校生活に関しての注意が肝要であり,海外ではこれらをすべて休ませる方法もとられている2)。
脳振盪を起こした,もしくは脳振盪が疑われる場合は,段階的競技復帰プロトコール(graduated return to play:GRTP)に従って復帰することが望ましい。GRTPでは,十分な休息をとり症状が完全に消失した後,徐々に運動量を上げていくが,それぞれの間に24時間の間隔を入れ,最終的にプレーに戻る前にメディカルチェック(medical clearance)を行うことが推奨されている。したがって,すべての復帰プログラムを遂行するには,少なくとも約1週間は必要である。
GRTPでは,運動量ゼロの状態からプレー再開まで6つの段階(1:活動なし,2:軽い有酸素運動,3:スポーツに関連した運動,4:接触プレーのない運動・訓練,5:接触プレーを含む訓練,6:競技復帰)を設け(図1)2)4)~6),症状が出現しなければ次の段階に進む。症状が出るようであればその前の段階に戻り,24時間の休息後に再度レベルアップを進める。4の「接触プレーのない運動・訓練」では,頭部への衝撃だけでなく,回転を伴う運動も避けることが重要である。特に,19歳以下の小児・若年者では,脳振盪からの回復が遅れるとされているためである。
近年,小児・若年者の脳振盪については,「受傷後7日以内の運動再開が,28日目時点において持続性脳振盪症状を有する危険性を減少させる」といった報告も認められることから,慎重に評価しながら復帰プログラムを遂行することが重要である7)~9)。
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