内戦が続く南スーダンで「国境なき医師団(MSF)日本」として昨年10月から今年4月まで医療支援活動(健康教育)を行った園田亜矢氏が9日、都内で会見し、劣悪な衛生環境による感染症増加など健康被害の状況を報告した。
避難地区の1つである、約3万人が避難する「マラカル国連民間人保護区域」におけるMSFの医療活動について園田氏は、主に他の支援団体が対応できない結核、HIV/エイズ、リーシュマニア症の治療にあたっていたことを紹介し、課題として、結核が多いにもかかわらず避難民が密集していて換気が難しい環境であることや、手術を行う施設がないことなどを列挙。そして「今は雨季なので水たまりが小川になり、汚物が混じり、そこで子どもが遊ぶ状況。マラリア、下痢、コレラ、肺炎が増えている」と問題視した。さらに目の前で家族が殺害されたり性暴力被害に遭うなどの悲惨な経験によって精神疾患を発症する人も多く、「心理ケアも行っていた」と説明した。
園田氏が行っていた健康教育については、避難者数の把握や予防接種の呼びかけのほか、文字が読めない避難者にも疾病予防の重要性が分かりやすく伝わるよう紙芝居を用いて啓発したり、コレラ予防の曲をつくりラジオで流すなどの活動を行っていたという。
さらに、帰国間際に現地スタッフから「南スーダンの状況を海外に伝えないと事態は好転しない。ぜひ僕たちの状況を伝えてほしい」と託されたことを紹介し、「それが心に響いた」と会見を開いた理由について説明した。
国連によると、南スーダンは2013年12月から始まった内戦により現在、国民の30%(380万人)が避難者で、42%(490万人)が飢餓状態。また、子どもの10人に1人は5歳の誕生日までに死亡している。(現地の写真はすべてMSF提供)