No.4752 (2015年05月23日発行) P.26
小路純央 (久留米大学医学部神経精神医学講座講師/同大学高次脳疾患研究所)
藤木 僚 (久留米大学医学部神経精神医学講座/同大学高次脳疾患研究所)
山下裕之 (久留米大学医学部神経精神医学講座/同大学高次脳疾患研究所)
加藤雄輔 (久留米大学医学部神経精神医学講座/同大学高次脳疾患研究所)
森田喜一郎 (久留米大学医学部神経精神医学講座/同大学高次脳疾患研究所教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-17
現在認知症に対する根本的治療薬はないが,軽度認知障害(MCI)など早期の段階での積極的な予防・対応・治療が望ましい
疫学研究から,アルツハイマー病(AD)や血管性認知症(VaD)の危険因子として,糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が報告されている
糖尿病や脂質異常症の治療による認知症の発症予防,進行抑制についての結論は得られていない
食事・運動療法のほかに,現時点で考えられるMCIの対応や治療可能性に言及する
わが国は超高齢社会に突入し,2012年時点での有病者数は認知症患者が約462万人,その予備軍とされる軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の人が約400万人とされ,久山町研究をもとにした認知症患者の推計では2025年(平成37年)には700万人に達するとされる。認知症の最大のリスクは加齢であるが,わが国の認知症患者の約6割がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD),約2割が血管性認知症(vascular dementia:VaD)とされ,VaDのみならずADも,日常の生活習慣や,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病が関連している。また高齢になるほど,ADとVaDの両方の病変が併存しやすくなることも報告されている。認知症の治療として遺伝子治療や免疫療法などが考えられているが,アミロイドβ(Aβ)の生成過程を制御する認知症の薬剤や免疫療法は現在まで,その有効性が証明されておらず,根本的治療薬はない。認知症対策を考える上で,まず生活習慣病の予防対策とともに,いかに早期に発見し,対応・治療を行うかが重要である。ADやVaDなど認知症は,記憶障害を主とした複数の認知機能障害と社会生活の障害によって診断され,その前段階としてMCIがあり,この段階での治療介入の研究が行われている。本稿ではこれまでの知見をもとに,VaDやADの発症メカニズムを考慮したMCIの治療や対応について概説する。
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