頭痛は日常診療でよく経験する。脳卒中,髄膜炎などの二次性頭痛の鑑別の必要性は言うまでもないが,片頭痛,緊張型頭痛を代表とする一次性頭痛は慢性化し,通常の治療では難渋することも少なくない。また,片頭痛に使用されるトリプタン系製剤,緊張型頭痛に使用されるNSAIDsなどは,副作用や薬物乱用頭痛を生じさせる問題もある。このような背景から,漢方薬が頭痛診療に貢献できることは少なくない。
『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』では,漢方薬における処方体系において同病名でも体質により薬が異なるという点が研究に歯止めをかけており,科学的な裏づけが不足しているとしつつも,経験的使用による効果を評価しており,呉茱萸湯,桂枝人参湯,釣藤散,葛根湯,五苓散をグレードBと位置づけている1)。これらの鑑別点については省略されているが,実際の診療においては理解しておきたいところである。簡潔に述べると,呉茱萸湯は眩暈,悪心・嘔吐,冷え,桂枝人参湯は胃腸虚弱,下痢,釣藤散は朝の頭痛,眩暈・ふらつき,不眠,葛根湯は後頸部の筋肉のこり,五苓散は口渇,尿量減少,などである。また,これら以外にも有効な漢方薬はあり,胃腸虚弱,眩暈には半夏白朮天麻湯,体格良好,のぼせ・赤ら顔には黄連解毒湯などがある2)。詳細は成書を参照して頂きたいが,これらだけでも理解しておくと有効率は上がるものと考える。
【文献】
1) 慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会, 編:慢性頭痛の診療ガイドライン2013. 医学書院, 2013.
2) 佐藤 弘:漢方治療ハンドブック. 南江堂, 1999.
【解説】
河尻澄宏 東京女子医科大学東洋医学研究所