日本癌治療学会が7月末、『小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』を初めて刊行した。小児、思春期・若年がん患者のサバイバーシップ向上を目的に作成されたメディカルスタッフ向けのガイドラインで、対象患者は「原則40歳未満で治療を開始した患者」である。
ガイドラインは、総論、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、脳の8分野に分け、各分野のがん治療の専門医や生殖医療の専門医などが議論を重ね作成された。各分野で「どのような患者が妊孕性温存療法の適応となるか」「どのような情報を提供すべきか」「妊孕性温存療法に伴う治療開始遅延は容認されるか」「治療終了後いつから挙児または妊娠可能となるか」といった診療上直面しそうな問いに、推奨グレードをつけて回答している。
総論では、「がん治療医は、何よりもがん治療を最優先する」と強調。「がん治療医は、がん治療によって生殖可能年齢内に不妊となる可能性およびそれに関する情報を患者に伝える」「挙児希望がある場合、可能な限り早期に生殖医療を専門とする医師を紹介する」「がん治療医は、生殖医療を専門とする医師との密な医療連携のもと、妊孕性温存療法の有無やその時間を考慮する」とした。米国のASCO2013ガイドラインのアルゴリズム(図1)を例に、がん治療医には、患者の意思決定が可能となるよう最大限の情報提供を求めている。
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