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ロタウイルスワクチン服用患者嘔吐時の対応法

No.4688 (2014年03月01日発行) P.62

中野貴司 (川崎医科大学小児科学教授)

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-09-12

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【Q】

2種類のロタウイルスワクチンである経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(ロタリックス®)と5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン(ロタテック®)を服用した患者が嘔吐した場合,再投与は必要か。また,そのほかの対応法があれば併せて。(佐賀県 S)

【A】

原則として再投与は必要ないが,ワクチンの大半を嘔吐したと判断すれば考慮することもある。吐物の処理に際しては,弱毒生ワクチンであることに配慮する

ロタウイルスワクチンを嘔吐した場合の対応

現在は国内外で2種類のロタウイルスワクチンが使用されているが,いずれも経口投与する弱毒生ワクチンである。本剤を服用した児が嘔吐した場合の対応としては,2つの点に注意する必要がある。1つは有効性に関する事項で,再投与が必要か否かである。もう1つは,本剤は弱毒生ワクチンであり,感染性への配慮を含めた吐物の適切な処理方法である。

再投与の考え

①ロタリックス
「接種直後にワクチンの大半を吐き出した場合は,改めて本剤1.5mLを接種させることができる」と添付文書に記載がある。

②ロタテック
「接種直後に本剤を吐き出した場合は,その回の追加接種は行わないこと。(臨床試験において検討が行われていない。)」と添付文書に記載がある。

③再投与の必要性に関する考え方
2剤に関する我が国での添付文書を参照すると,前者は大半を嘔吐した場合は再投与,後者は嘔吐しても再投与は行わない,と薬によって対応に差異があるように思われる。しかし,これらの記載は,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Con­trol and Pre­vention;CDC)が発信した予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Im­muni­za­tion Practices;ACIP)による推奨事項を,それぞれ異なる出典から引用したものである(表1)。

前者は,1994年の経口ワクチンに関する推奨事項1)が参考にされている。そこでは,「乳児ではしばしば経口薬[たとえば,経口生ポリオワクチン(oral polio­virus vaccine;OPV)など]を飲み込むことに失敗することがある。もし,ワクチン接種者の判断により,ワクチンの大半を吐き戻した,あるいは接種直後(たとえば,5〜10分以内)に嘔吐したと考えられた場合には,改めてその来院時にワクチンを接種することができる」と記載されている。

後者は,2009年のロタウイルスワクチンに関する推奨事項2)が参考にされている。国内および外国の臨床試験において,追加接種に関する検討が行われていないことから,「接種直後に本剤を吐き出した場合は,その回の追加接種は行わず,接種スケジュールに従い,接種を行うこと」と記載されている。

実際の対応

現状での実際の対応としては,次のように考える。服用して一定の時間が経過している,嘔吐物が少量である,などの場合は,再投与の必要はない。一方,注意して投与すれば起こる頻度は高くないであろうが,もし投与直後にワクチンの大半を嘔吐した際には,再投与を考慮してもよい。

吐物の処理

身体に付着した吐物については,拭き取る,洗い流すなど標準予防策に基づいた対処を行う。衣類や物品については,ウイルス性胃腸炎を来す野生株への対応を準用して,次亜塩素酸や家庭用漂白剤などの塩素系消毒薬を用いて洗濯や拭き取りを行えば,より確実な感染制御策となる。

【文 献】

1) John C. Watson, et al:MMWR. 1994;43 (RR01):1-38.
[http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/00025027.htm]
2) Frederic E, et al:MMWR. 2009;58(RR-2):1-25.
[http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5802.pdf]

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