【Q】
2種類のロタウイルスワクチンである経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(ロタリックス®)と5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン(ロタテック®)を服用した患者が嘔吐した場合,再投与は必要か。また,そのほかの対応法があれば併せて。(佐賀県 S)
【A】
原則として再投与は必要ないが,ワクチンの大半を嘔吐したと判断すれば考慮することもある。吐物の処理に際しては,弱毒生ワクチンであることに配慮する
現在は国内外で2種類のロタウイルスワクチンが使用されているが,いずれも経口投与する弱毒生ワクチンである。本剤を服用した児が嘔吐した場合の対応としては,2つの点に注意する必要がある。1つは有効性に関する事項で,再投与が必要か否かである。もう1つは,本剤は弱毒生ワクチンであり,感染性への配慮を含めた吐物の適切な処理方法である。
前者は,1994年の経口ワクチンに関する推奨事項1)が参考にされている。そこでは,「乳児ではしばしば経口薬[たとえば,経口生ポリオワクチン(oral poliovirus vaccine;OPV)など]を飲み込むことに失敗することがある。もし,ワクチン接種者の判断により,ワクチンの大半を吐き戻した,あるいは接種直後(たとえば,5〜10分以内)に嘔吐したと考えられた場合には,改めてその来院時にワクチンを接種することができる」と記載されている。
後者は,2009年のロタウイルスワクチンに関する推奨事項2)が参考にされている。国内および外国の臨床試験において,追加接種に関する検討が行われていないことから,「接種直後に本剤を吐き出した場合は,その回の追加接種は行わず,接種スケジュールに従い,接種を行うこと」と記載されている。
現状での実際の対応としては,次のように考える。服用して一定の時間が経過している,嘔吐物が少量である,などの場合は,再投与の必要はない。一方,注意して投与すれば起こる頻度は高くないであろうが,もし投与直後にワクチンの大半を嘔吐した際には,再投与を考慮してもよい。
身体に付着した吐物については,拭き取る,洗い流すなど標準予防策に基づいた対処を行う。衣類や物品については,ウイルス性胃腸炎を来す野生株への対応を準用して,次亜塩素酸や家庭用漂白剤などの塩素系消毒薬を用いて洗濯や拭き取りを行えば,より確実な感染制御策となる。
1) John C. Watson, et al:MMWR. 1994;43 (RR01):1-38.
[http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/00025027.htm]
2) Frederic E, et al:MMWR. 2009;58(RR-2):1-25.
[http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5802.pdf]