「脳卒中学─新時代を切り開く」をテーマに、3月13日から大阪市で開かれる第39回日本脳卒中学会総会会長を務める。
今回から新たに放射線診断、公衆衛生、神経内科を専門にする3人に副会長を依頼。総力を結集して総会の準備を進めている。
「脳卒中の治療と予防は、内科、外科、公衆衛生、救急、リハビリといった多くの領域の専門家にまたがっています。学会総会もチームの総合力で企画運営したいと考えました。また、総会は最先端の知見を発表、討論するのが大きな目的ですが、将来の学会を担う若手を育成する場であると考え、教育講演を大幅に充実させました。多職種を対象とした 『コメディカルプログラム』にも力を入れています」と強調する。
吉峰さん自身は脳外科の診療、教育に加え、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の脳内に電極シートを埋め込み、「さむい」「ありがとう」など、患者の意思や考えている内容がパソコン画面に打ち出される「ブレイン・マシン・インターフェイス」(BMI)の研究と臨床応用に取り組み、国内外にその名を知られる。もともとはてんかんの手術に用いられる技術を応用した方法で、昨年4月、ALSの40代男性に電極シートを埋め込み、BMIによるコンピュータやロボットの操作に世界で初めて成功した。
「いまの装置ではコードが体の外へ出ている状態なので、患者さんが自宅へ帰れません。その欠点を克服するために、埋め込み型のBMIシステムを開発中です。将来的には、ALSに限らず、脊髄損傷や義肢を装着する人のサポートなど幅広い応用を目指したい」と語る。
もうひとつ力を入れるのが、脊髄損傷の患者に本人の嗅粘膜を移植することで損傷した神経を再生する治療法だ。脊髄が切断され、10年以上全く両足が動かなかった人に嗅粘膜を移植し、リハビリを続けたことで、歩けるようになった例もある。
「この再生治療も改良を加え、より短期間のリハビリで、より完全に運動機能が回復できるようにしたいですね」。これまで治らなかった病気の患者を助けるべく、多くの共同研究者と協力し研究開発に邁進する。