【Q】
加齢黄斑変性とアルツハイマー病は,病因に共通点があると言われているが,その詳細について。
(東京都 S)
【A】
加齢黄斑変性とアルツハイマー病はともに神経変性疾患であり,加齢とともに有病率が増加する。喫煙,高血圧などの共通した危険因子を持ち,組織学的にも共通の特徴を認める
加齢黄斑変性とアルツハイマー病はともに神経変性疾患である。またどちらも年齢との強い関連を認め,加齢とともに有病率が増加する疾患である1)2)。これらの共通点から,両者が共通の病因を持っている可能性があると考えられ,これまでにも様々な研究が行われてきた。
加齢黄斑変性とアルツハイマー病それぞれの発症に関与する危険因子の研究では,ともに喫煙,高血圧などが発症に関与していることが報告されており3),共通した危険因子を持っていることが分かってきた。
組織学的にも共通点が見られ,加齢黄斑変性患者の眼底に見られるドルーゼンとアルツハイマー病患者の脳組織に見られる老人斑はどちらもβ–アミロイドと言われる蛋白質が主成分であることが明らかとなっている3)。酸化ストレスや炎症,補体が病態に関与していることも共通の特徴である1)2)。
しかしこれまでのところ,遺伝的危険因子には共通なものは報告されていない3)。また加齢黄斑変性とアルツハイマー病の関連性を調査した疫学研究では,一致した結果は得られておらず,両者の関連は明らかではない。
オランダのRotterdam Studyでは加齢黄斑変性と認知機能低下や認知症発症との関連は少ないとする疫学調査を報告している4)。一方で米国のCardiovascular Health Studyでは加齢黄斑変性とアルツハイマー病には関連がないと報告しており5),今のところ一致した見解は得られていない。
これは加齢黄斑変性とアルツハイマー病がともにそれほど有病率が高い疾患ではないため,多数の対象者を集めて両者の関連性を調査する研究方法が難しいからではないかと思われる。
そのような中で,6万5894名の加齢黄斑変性患者を12年間追跡調査して,アルツハイマー病発症との関連を調査した論文が2013年に報告された6)。彼らは,両者は確かにどちらも神経変性疾患であり共通の危険因子や組織学的所見を持っているが,加齢黄斑変性患者にアルツハイマー病やそのほかの認知症が多く発症するということはなく,両者の発症には関連がなかったと報告している。
これほど多数の加齢黄斑変性患者を長期間にわたり追跡調査した報告はこれまでになく,この研究結果は大変興味深い結果であると言える。
●文 献
1) Khandhadia S, et al:Adv Exp Med Biol. 2012; 724:15–36.
2) Ohno–Matsui K:Prog Retin Eye Res. 2011;30 (4):217–38.
3) Kaarniranta K, et al:J Alzheimers Dis. 2011; 24(4):615–31.
4) Proitsi P, et al:Neurobiol Aging. 2012;33(8): 1843. e9–17.
5) Baker ML, et al:Arch Ophthalmol. 2009;127(5) :667–73.
6) Keenan TD, et al:JAMA Ophthalmol. 2014;132 (1):63-8.