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「透析難民」減少に挑む ─災害透析の現状[震災5年 医療は今]

No.4795 (2016年03月19日発行) P.12

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 透析医療は、1人当たり1回につき120Lの水を必要とし、医療の中でも特にインフラ依存度が高い。東日本大震災以降も2014年の山梨雪害、昨年の茨城県の水害など、災害が起こる度に透析を受けられなくなる「透析難民」が発生しているが、首都直下地震、南海トラフ地震への備えはどうなっているのか。透析医療の災害対策に詳しい山川智之氏に現状と課題を伺った。

    山川智之氏
    大阪・仁真会白鷺病院理事長/日本透析医会災害時透析医療対策委員会委員長

    ─東日本大震災での透析医療をどのように総括されていますか。

    東日本大震災では建物の損壊が少なく、施設によっては貯水槽などを整備しており、インフラの備えと心構えと運がうまく重なり、被害を抑えられた部分があると思います。
    かかりつけの施設で透析を受けられない患者が約1万人発生しましたが、医療者側の都合で透析が受けられず亡くなった患者はゼロでした。医療者の努力の賜物です。例えば、宮城県から北海道へ80人近い患者を移送し、全員を入院透析で受け入れるというような手厚い支援が行われました。ただ、避難所で透析を受けていることを言い出せずに亡くなった患者もおり、完璧だったとは言えません。

    ─東日本大震災の経験から見えてきた課題は。

    医師同士のつながりの現状を把握することの大切さを思い知りました。
    例えば福島県は福島県立医大が県下の医療を束ねていると思っていましたが、実際には浜通りのいわき市などは東京とのつながりのほうが強く、県全体で情報伝達がうまくいかないことがありました。平時の人間的なつながりの薄さが、災害時の行政とのコミュニケーションを含め、さまざまな点で足かせになったことは否めませんでした。
    こうした反省もあり、福島県では県全体でネットワークを構築する方向に進んでいます。ただ、県単位で全体のつながりが乏しい地域はまだあります。そうした地域への日本透析医会支部の設置など、災害対策を担う地域ネットワークの整備が課題です。

    被災地から情報発信する人が必要

    ネットワークの構築だけでなく、災害発生時における情報を整理する人間も必要です。発災直後はみな目の前の患者対応に必死で、被災地外に情報発信する余裕がありません。
    透析医療はチームで行うもので、支援においても多職種連携の視点が重要です。そこで東日本大震災後、日本臨床工学技士会にお願いして、各県支部でコーディネーターを選んでもらい、透析医会のメーリングリストに登録してもらいました。医師のネットワークには、平時・災害時を通して行政のカウンターパートとしての役割があります。臨床工学技士には、被災地の情報を地域単位で吸い上げ、外部に発信する役割を期待しています。
    最近では、日本血液浄化技術学会、日本臨床工学技士会、日本腎不全看護学会、日本透析医会が中心となり、被災地と支援地の情報をつなぐ「機動部隊」として「透析医療災害協同支援チーム」(JHAT)が発足しました。災害時には先遣隊として被災地に入り、現地から情報発信し、場合によっては、職種の専門性を活かして治療支援も行うという構想です。

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