前立腺肥大症とは本来組織学的な状態を示すが,実臨床では「50歳以上の男性における下部尿路症状(LUTS)を呈する状態を指し,神経疾患などのほかの原因を認めないもの」と考えられる。第一選択薬であるα1遮断薬は排尿症状に加え,過活動膀胱(OAB)のような蓄尿症状にも有効であり,抗コリン薬の併用でより積極的にOABを治療できる。一方,前立腺体積が大きい症例は将来尿閉や外科治療が必要になるリスクが高いが,5α還元酵素阻害薬によりそのリスクが約3分の1に減少する。さらに最近の話題としては,ホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィルの保険適用とレーザーなどによる新しい経尿道的低侵襲手術などが挙げられる。本特集はこれら最近の話題について,わかりやすく紹介する。
1 前立腺肥大症の原因と初期症状─生活習慣の工夫で症状を緩和・改善する方法
国立長寿医療研究センター泌尿器科手術・集中治療部長 吉田正貴
2 前立腺肥大症の薬物治療
札幌医科大学医学部泌尿器科学講座教授 舛森直哉
3 前立腺肥大症の外科治療
日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野研究所准教授 持田淳一